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人生のスタンプラリー

人生のスタンプラリー認定協会埼玉支部

においのはなし

試しにつけてみたいと思っていた香水を、送ってくださった方がいる。僕は嗅覚が鋭いほうだから、もともと香水やアロマのようなにおいのするものはきらいだった。いまでもあまり強いものは苦手だし、ものによってはつけられないこともある。でも、いただいたブループールオムはいいにおいがするし、僕はその人に会うときはこれをつけていこうと思う。

僕の部屋はいまは、バラの香りがする。先日、父がバラのアロマオイルを買ってくれたのだ。
ようやく医者の許可が出て、アルバイトの面接を申し込んだ。その面接の日だった。
面接をお願いするための電話をかけるのにすら数日かかった。医師とカウンセラーによると、いわゆる大うつ病状態からはおおよそ脱してはいるが、いまでも強い不安障害が残っているらしい。それとパニック症と強迫性人格。自分ではよくわからない。
そして当日、面接に向かう途中でパニックの症状を起こした。
混乱から息がうまくできず、涙が出る。強烈な動悸と不安感に打ちのめされ、動けなくなる。たまたま近くにベンチがあって、そこに座り込んだ。柔軟剤の良いにおいがするハンカチを持たせてくれた母に感謝し、ペットボトルの水を持参しなかった自分を恨んだ。
その日は朝からずっと軽くうつ状態で、耐えられずに頓服として重めの安定剤を服用していた。そのため休日だった父が近くにスタンバイしてくれており、その助けで数十分後には回復した。それでも面接はキャンセルになり、目は腫れた。声も枯れてしまった。
その帰りに、父が仕事のついでを兼ねて雑貨屋に立ち寄った。そのままアロマオイルを販売する場所へと連れて行かれ、安眠のためのオイルを買うのはどうかと提案された。僕の嗅覚の良さは父譲りで、父はアロマや柔軟剤にとてもうるさいのだ。そして実際、父の使うアロマやお香はとても良い香りがするし、精神的にも効果が高いと感じている。
店頭にあったリラクゼーションのオイルや安眠用のお香を試したけれど、あまりピンとくるものがなかった。父も首を傾げていた。横で父が首をかしげるのを見ながら、その仕草があまりに弟に似ているのに驚いた。でもきっと指摘したら拗ねるだろうと思ったから何も言わなかった。
じゃあ安眠とは言わずとも、気分が良くなるものをと言って、ピュアローズと名付けられたオイルを買ってくれた。大きいボトルなので、僕の部屋と父の部屋のあいだの窓に置いて、お互いが使いたいときに使うことにした。
帰り道、運転してもらう車の中で僕らは無言だった。とても気にかけられた車内は嫌なにおいなどせず、父の噛むガムのにおいがした。



何が言いたいかっていうとつまり、いいにおいのする女の子の胸に顔うずめて死にてえなってことです。現場からは以上です。オチとかないです。やまなしおちなしいみなし。