人生のスタンプラリー

人生のスタンプラリー認定協会埼玉支部

僕には同性の友達がいない


僕には同性の友達がいない。
異性の友達だけがいる。

この記事における性別は以下のように定義しておこう。「身体、戸籍などは一切関係なく、自分の脳や精神が自認している自分の性別」。それをその人の性別とする。
GID(いわゆる性同一障害)だろうがなんだろうが、体が男で意識も男なら男だし、体が男でも意識が女性なら僕は女性として接するからだ。なので今回の記事ではそう定義する。


では僕は?
と、僕自身に性別を問うと、僕の頭の中の天使とか悪魔とか犬とかいろいろがぎゃーぎゃーと議論を始めて終わらない。彼らの言いたいことに耳をすませ、要旨をまとめ簡潔に言うと、僕の性別は「男の子にあこがれた何者か」である。
広義に言葉を使うなら「トランスジェンダー」、LGBTsのTである。日本では「トランスジェンダーといえばGID」と思われがちだが、僕はGIDではない。だが、自分の身体の性別と自認している性別に大きな差があるという意味において、僕はトランスジェンダーだ。自分は男女どっちの仲間だとも思えない。

自分の身体は女だ。下を見れば垂れた乳房がある。クリトリスはあるがペニスはない。女の子とセックスをするときは男性器の代わりに指を使うけれど、僕の指は射精もおしっこもしない。男性とセックスをするときは膣を使う。そちらは月に一度は厳しい痛みを伴う月経もある。そのたび僕は自分が女であることを自覚しては落ち込むのだ。
恋愛対象は地球出身で英語か日本語ができれば(すなわち僕と言語でコミュニケーションが取れれば)オーケーだ。性別や属性なんてものには特に頓着がない。むしろ拘泥があるのはその人の顔面偏差値である。

僕は身体が女であることを落ち込み、男の子にあこがれている。

男女二言論を語る人は、男にあこがれていると言うならお前はその対の性別である女だろうといってくる。だが僕は自分を女だとも男だともうまく思えない。どちらに属すにしてもいろんなものが足りないし、いくつかの自意識が過剰だ。
そもそも男女二元論はあまりに安易すぎる(簡単に男女二元論を語る人にインターセックスなどのことについて聞いて筋の通った答えが返ってきたことがないという経験則もある)。
僕は性別は2つだけではないと思っている。
女のなかにもいろんなのがいる。攻撃的だったり、男勝りだったり、おしとやかだったり。男だってそうだ。なかには自分の性別は男女どちらかに属すと自認したうえで、あまり自分の性別を好まない人だっているだろう。知り合いでは己の女性性を嫌う女性が多い。男性にもいる。
そういうパーソナリティや指向も含めて考え、僕は性別はグラデーションだと考えている。男女どちらか、という二択ではない。10人いれば10通りあるものだ。

さて、では男とも女とも思えない僕の性別はなんだ。グラデーションの中の、どこに位置するのか。
暫定的には「男の子にあこがれている何者か」あるいは「中性もどき」である。なにかと不便なので(こんなことで不便を被るほうがどうかしていると思うが)、公的な書類では止むを得ず戸籍に従って女性としている。
男女兼用トイレがある場合はできるだけ女性用を避けてそちらを利用し、一人称は僕、普段はナベシャツで胸を潰してユニセックスな服装をしている。アンケートで必須ではないなら性別には答えない。以前は自由記入になっているなら「トランスジェンダー」と答えるようにしていた。だがそう書くとGIDと思われてしまうことも多く、それはそれで困っている。そうじゃないんだよなぁ、と。ゆえに今では「中性」という言葉を使う。
男女二元論から解放されたい(あるいは逃走したい)という願望のようなもの、自分でもよくわからないというクエスチョンを含んだ、「中性」だ。

そういう意味で、僕には同性の友達がいない。女の子の友達も、男の子の友達も、それ以外の性別の友人もいるけれど、全員異性なのだ。「中性(男の子にあこがれている何者か)」という性別を自認する人と、まだ巡り合ったことがない。

繰り返すが、性別は僕の中で大した問題ではない。仲良くなるためにも、恋愛においても性別はなんの障壁にもならない。本当は性別なんかいらないんじゃないかとさえ思う。自分について考えるときもそうだ。自分の賢さや趣味や体型や仕事やもろもろには大いに関心があるが、自分の性別はものすごく優先順位の低いところにある。それも「うーん、よくわからないんだよなあ〜」という、明確な答えがない状態で。そしてそれでいいと思っている。積極的に自分が広義のトランスジェンダーでパンセクシュアルであることを公開して生きていく、それが僕だと思っている。

でも、ひとつだけ、羨ましいことがある。
それが、「同性の友達」という存在だ。
「同性の友達」と遊ぶ経験を、「同性同士だからできること♡」を、僕もしてみたい。
別に男女関係なく大好きで大切な友人に恵まれて生きてきたから、そんないまさら…とは思う。ほんとうに「いまさら」ではある。
それでも、もし同性の友達がいたら、してみたい話がたくさんある。男の子にあこがれながら、近づけないことのしんどさとか。男の子に同性に類するとして扱ってもらえない悲しみとか悔しさとか。女の子から受ける「どうしたんだこいつ」の視線の話とか。中性って言って馬鹿にされたときにどう対応しているかとか。そんな話をしてみたい。

あなたの性別はなんですか。
女ですか、男ですか、その他ですか?
よかったら、あなたの性別について詳しく教えてもらえませんか。
あなたの性別は、どんなグラデーションで、どんな色ですか?それは僕と同じでしょうか。違うとしたら、どんな形で色でしょうか。