人生のスタンプラリー

人生のスタンプラリー認定協会埼玉支部

ポルノグラフィティ「メビウス」の話


ポルノグラフィティメビウス」の話

ライブツアーで披露された新曲(リリース未定)
以下、解釈兼ねて書いたショートショート

*****

やさしいあなたは泣きながら私のくびねを締め上げてくれた。
死にたかった。どうしようもなく。
あなたと生きていけない未来なら、そこに希望なんてひとつもない。死ぬこと以外に安らぎはない。
でも、希望を抱けないのは私だけ。
私はあなたじゃなきゃだめだけれど、あなたは私じゃない人とでも歩んでいける。
そう知っているから、だから、まさかあなたが泣くなんて思わなかったの。
はずかしい。そこまであなたのことを追い詰めてしまったのかな。ごめんね。どうか、ゆるしてほしい。

あなたと共にすごせるなら、この人生だってきっと好きだったんだけど、壊れてしまった。愛したかった、私の人生、あなたの隣にいる私。でも、今の私の肺はしぼんでいる。
ねえ、この愛は時間の無駄だったでしょう。
ごめんね。あなたを私から解放したかったの、うそ、私はずっとあなたといたかったけれど、できないのなら、あなたにくびねをしめて……おわりをプレゼントしてほしかったの。

やさしくほどかれた私のものだったからだは、まるでゆびあみ人ぎょう。じょうずにほどければ、あなたが殺したなんて誰も思いやしない。
あなたは私じゃなくても良かったはずなのに、私は特別をいつも欲しがったから、きっと迷惑だったよね。ごめんなさい、ごめんなさい。どうかわたしのわがままは全て忘れて。わたしのくびねをしめて殺したことさえ、どうか忘れて。
やっぱりあなたの時間を愛を無駄にしてごめんなさい。帰宅のチャイムは、あなたのいる世界とこれから私がいくせかいのさかいめ。

あなたがわたしのくびねをしめたこと。
それでもあなたには明日が来ること。
あなたが私の隣にいない世界に生きる価値はないこと。
あなたはそうじゃないこと。
……もしかしたらあなたも、本当は私の隣で人生を歩みたかった?でも、そんな気持ちは許されなくて、わたしといたいという気持ちを永遠に葬るために私を殺してくれたの?……だとしたら、ありがとう。そして、そんなに思い詰めさせてしまったこと、どうか、わすれてね。

ねじってつなげて、あなたは私の最後の人になる。
こわれてしまった、こわしてしまった。
どちらでもかまわない。時間を無駄にさせてごめんなさい。
でも、本当にあなたが好きだったの。
人生がどうにかなるほど好きだったの。
それだけは、ゆるしてほしいよ。


*****

きっと上手に殺してもらえたんだと思う。
最後を見られるのが恥ずかしかったのか、それを頼むのが恥ずかしかったのか、あるいは生きていたことになのか、赦しを乞いながら「殺してもらった」。
じょうずにほどけば跡形もない人間、恋人とかそんな関係に名前を欲しがったことをさいごに後悔する三途の河の上。このチャイムが鳴ったらあちらの世界。
ただ愛したことを、そしてただ愛されたいと願ったことを、どうか許して、忘れてほしいと願う、死ぬことこそ幸せと死を抱きしめた人のうた。生きることも死ぬことも、すべてあなたに赦しを乞いながら。

このうたは僕にとって限りなくノンフィクションなので、考えるとつらい。僕も殺してほしい。きっとあなたはそうしてくれないけれど。